Q&A

Ⅰ 総論

1 「名前」の由来は?

 すみれ自然農園食堂がある場所は、自然がそのままで、春先に綺麗なスミレを見ることができます。スミレは、小さいながらも厳しい冬に耐える宿根草です。種子を遠くに飛ばしたり、アリに運んでもらったりして確実に子孫を残そうとします。また、春の時期以降は、花を咲かせない「閉鎖花」で自家受粉して種子を作るというユニークな性質もあります。花言葉は「小さな幸せ」。この地に見られるスミレの「かわいらしさ」と「たくましさ」にあやかって名付けました。

 

2 「エコ・アグリミュージアム構想」とは?

 1960年代のフランスで、地方文化の再確認と中央集権排除という思想の中で誕生した「生態学」(Ecology)と「博物館」(Museum)を結びつけ、自然豊かな地方の町や村全体を博物館とし、人間と環境との関わりを扱うエコ・ミュージアムが提唱されました。そして、この構想に自然の生命力を基礎とする「農業」(Agriculture)の多面的機能を再認識し、体験、観察、保護する考えをさらに盛り込んだものが、「エコ・アグリミュージアム構想」です。

3 農業の「多面的機能」とは?

 ①国土の保全、②水源の涵養(かんよう:雨水などが地面にゆっくりと浸透して地下水となること)、③自然環境の保全、④良好な景観の形成、⑤文化の伝承など、農村で農業生産活動が行われることにより生じる、食料やその他の農産物の供給機能以外の多面にわたる機能のことをいいます。

 このため、日本の農業及び里山は、食料の生産を担うだけでなく、国土、水資源、環境、文化、教育、福祉、健康などにおける、現代社会の様々な課題の解決につながる多面的な機能を持つため、市場原理・グローバル化の流れで衰退させるのではなく、今後も保護する必要があるといわれています。

4 「ソーシャル・アグリビジネス」とは?

 地球的・社会的な「農業の課題」の解決に取り組む仕事のことです。すみれ自然農園食堂では、企画事業を通じて「農」を取りまく環境、社会事情などを知ってもらい、参加者に体験・交流などを楽しんで頂きながら課題を解決する「力」と「知恵」も育んでもらいたいと考えています。

5 「農業の課題」とは?

 次のことが、指摘されています。

・世界的な人口増加、アジア諸国などの経済発展化(欧米化)などの他に、仮に原油価格の上昇、円高から円安への移行などによる経済変化が生じた場合、安定した食料輸入が困難となり食料危機の到来が懸念されるようになったこと。

・化学肥料を継続的に使う土地では、土本来の力が衰え、化学合成農薬に依存した栽培方法は、食材の安全性と生態環境の持続性が心配されるようになったこと。

・日本は土地が狭く、また、農家も減少しているため、今後も豊かな食生活を維持するだけの生産体制を維持することが困難になってきたこと。

・日本では「化学物質」である農薬・肥料が諸外国より多く使われているが、使用する農家が必ずしも化学の専門家ではないこと。

・外国に頼るだけでなく、自分達の力で食料を手に入れるため、再び日本の農業に活力を取り戻す努力が求められてきたこと。

・地元の農家が地元の消費者、農協、自治体の協力を得ながら協同して営農を守っていく取り組みが必要になってきたこと。

・収穫量と消費者が求める量が、ちょうどよいバランスにならないと農家は、安定した収入を得られないこと。

・土地を最大限に生かし、安全で栄養価のある農作物を生産する農業が重要になってきたこと。

・天候の変化に左右され、工業生産に対して、農業による食料生産はリスクが高いこと。

6 「化学肥料」に対する考え方は?

 これまで、化学肥料は農業生産に多大な貢献を果たしましたが、化学肥料だけで栽培すると土の中の有機物が減少し「地力」が低下したり、過剰な施肥成分が農作地から流れ出て、河川、地下水などの水質を悪化させるなどの問題が生じました。また、日本は、リン鉱石、尿素の原料の多くを海外から輸入していますが、世界的な資源減少と人工増加に伴う食料増産などを背景に取引価格の上昇を招いています。

 すみれ自然農園食堂は、地域(里山)にある肥料資源を見直し、上手に活用しながら無駄なく循環させ、その農法を持続していくことが、今後の里山の農業には大切だと考えています。

7 「グリーンコンシューマー」とは?

 環境問題に配慮して、商品の選択を行う賢明な消費者のことです。

8 「すがれ追い」 とは?

 すがれとは、クロスズメバチ(Vespula flavicepslewisi)のことで、地蜂(ジバチ)とも呼ばれます。すがれ追いとは、このハチに綿やこよりなどの目印をつけた餌を持たせ、飛ぶ蜂の後を追いかけて、巣を土中から見つける一種の狩りのことで、秋の地方風物です。信州では、巣から採れる蜂の子は貴重な蛋白源として重宝され、幼虫と蛹を甘からく煮つけて食用にします。

9 「鎌頭」とは?

 当園担当の♂が肩書きを思案していた時に、「江戸時代、農作業を差配した小作人の頭のことを「鍬頭」(くわかしら)と称していた」ことを知りました。♂は、鍬の扱いが苦手なことから、この呼称をひねって、造語の「鎌頭」(かまかしら)を肩書きとしています。

 

Ⅱ 農園(圃場)

1 「農法」は?

 環境や食べ物の安全性を高めることを意識した「有機農法」です。植物由来の堆肥を中心とした有機物を主に使用し、地域(山里)内の「生命循環」を図っています。

 すみれ自然農園食堂では、自然界にある天地法則に従い「生命」の働きによって「生命」を育み、「生命」の力を信頼して、人間が努力・創意工夫して栽培する農法が、農業の根本だと考えています。

2 「土」の特徴は?

 農園の土は、「黒ボク土」です。腐植に富み、保水力が強く、そして、柔らかくホクホクしているため、少肥でも根張りがよく、特に芋類や根菜類の栽培に適しています。

3 「もみ殻燻炭」とは?

 稲籾(もみ)の殻を燻炭器(くんたんき)という道具で、蒸し焼きにして形状を維持させたままじわじわと炭化させた弱アルカリ性質の特殊肥料です。土壌改良材としての働きが立証されており、①排水性の向上、②保水性の向上、③酸性土壌のpH改善、④可溶性ケイ酸の供給、⑤有益微生物の増加、⑥根腐れ防止などの効果があります。

 また、根がよく発達し、細根や根毛が増えることもわかっています。

 すみれ自然農園では、特に⑤の効果である「バチルス菌」などによる有害菌の抑制や「アーバスキューラー菌根菌」(AM菌根菌)という植物の根に共生する有益菌によるリン酸の供給という『小さな生物』の大きな働きを大切にしたいと考えています。

4 「アーバスキューラー菌根菌」とは?

 アーバスキューラー(Arbuscular)菌根菌とは、糸状菌の一種で、植物との共生器官を作り、根からさらに菌糸を伸ばして根が届かない場所の栄養や水分、特に「リン酸」の吸収を助けています。

 また、この菌根菌は、逆に植物から光合成で作った糖などをもらって共生します。一般微生物との競合や化学物質に弱いため、一部(アブラナ科、アカザ科など)を除く多くの植物と共生関係にあり、地上植物の約8割と共生できることが知られています。

 栄養の少ない炭を投入すると、この菌根菌は活性化されますが、逆に肥料や農薬が多投入された圃場では、繁殖しにくい傾向にあります。

 なお、約4億年前頃の、地上に現れたばかりの古代の植物の根の化石からも菌根菌と思われる構造が見つかっていることから、貧弱な根しか持たなかった古代の植物は、菌根菌による水分や栄養吸収の助けを得て、陸上に分布した可能性が指摘されています。

5 「里山農法」とは?

 植物の生育に不可欠で、「必須多量要素」となっている元素は、炭素、水素、酸素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄の順番ですが、近代農法は、窒素・リン酸・カリという「肥料3要素」を重点にしています。

 これに対し、この農法は、自然界に広く存在し、あらゆる生物に必要な「炭素」に重きを置いて、施肥という考えより、①「光合成」(酸同化作用)という植物が持ち得た自然生産力を大切にし、②炭素分の多い自然物を利用して多様な耕地生態系を作り、③作物と圃場生物を共栄させる、自然にやさしい農法です。

 里で身近に手に入る藁(わら)、籾(もみ)、落葉、草や人が作った「」などを用いるのが特徴です。また、非常に簡単な農法のため、「炭循」に「単純」をかけて「たんじゅん農法」と呼ぶ人もいます。

 この農法で育てた野菜には、①雑味が少なく糖度やアミノ酸含量が高い、②香りがよい、③病害虫の被害が少ない、④腐りにくく貯蔵期間が長い、などの特長があるといわれています。

 なお、すみれ自然農園食堂では、ご近所にナメコの生産工場があるため、食用キノコの「廃菌床」も有効に使用しています。(有効利用により、地域から排出される「産業廃棄物」の軽減につなげています。)

6 食用キノコの「廃菌床」とは?

 ナメコやシメジの人工栽培に使われていたキノコを育てるための倍地です。広葉樹のチップ、米ぬかなどが原料なため、家畜糞に比べ炭素分が多いのが特徴です。

 ただし、工場から排出されて間もないものは、未分解の木質物が含まれており、そのまま圃場に鋤き込むと、分解途上で発生する有害成分と「窒素飢餓」による生育障害が発生します。このため、使用する際は、じっくりと熟成させる堆肥化が必要となります。

 すみれ自然農園食堂では、この廃菌床を6ヶ月以上かけて堆肥にしますが、その間にカブトムシが卵を産み付け、生育する幼虫が完熟にしてくれますので、「土づくり」には最適なものになります。

 なお、近年の研究で、カブトムシ(幼虫)の腸内細菌には、空気中の窒素を取り込む能力があり、木くずを食べても、糞には窒素分が含まれていることが明らかになっています。

7 「窒素飢餓」とは?

 未分解の有機物を鋤き込むと微生物による急激な分解が始まり、有機物を分解しようとする微生物と作物との間で、土の中の窒素成分を取り合う現象が起こります。この現象により、一時的に作物が窒素不足になることを「窒素飢餓」と言いますが、炭素率の多い未分解有機物(生藁など)を施用した場合は、特に起こりやすくなります。

 すみれ自然農園食堂では、炭素分の多い自然物を利用する場合は、土に鋤き込まずに畝面に有機マルチとして積み載せる方法を取っています。「草生栽培」とあわせて行うと、天敵の「棲みか」(すみか)を増やし、土はねも少なくなりますので、結果として病害虫の発生も軽減されます。

8 「草生栽培」とは?

 雑草を除草剤などで防除したり、耕耘して圃場地面をきれいにする「清耕栽培」に対し、イネ科、マメ科などの緑肥植物や強害性のない野草を生やして雑草を管理する栽培方法のことをいいます。この方法は土壌有機物の供給源となり、圃場の生物相を豊かにするため、環境にやさしい政策をとっているヨーロッパの国々では広く取り入れられています。

 また、傾斜面では降雨による土壌流亡を防ぐ効果もあります。このため、すみれ自然農園では、この「草生栽培」は、中山間地での農業に有効な方法だと考えています。

 なお、近年、大学の研究機関により、この草生栽培を「不耕起栽培」と組合わせることで、土の持つ機能がさらに向上することが報告されました。

9 「エコファーマー」とは?

 エコファーマーとは、堆肥等を使った土づくりと化学肥料・化学合成農薬の使用量を低減させる取組を一体的に行う計画を立て、その計画が県知事に認められた農業者のことです。

 なお、すみれ自然農園食堂では、有機JAS法で使用が認められている資材を除き、化学肥料と化学合成農薬を使用せずに栽培を行っています。

10 「有機栽培の野菜」は本当においしいのですか?

 有機栽培だから野菜がおいしくなるとは限りません。鶏糞などの窒素分の多い有機質肥料を与え過ぎると「エグミ」(雑味)のもととなる「硝酸態窒素」などの植物体内での含有率が高くなります。(特に「家庭菜園」では、この傾向が多いと指摘されています。)また、過剰な施肥は、病害虫の発生も増加させますので、ナス科の野菜などは、このストレスにより味が悪くなることが知られています。

 有機栽培で、おいしいと評判のある野菜の栽培方法の共通点は、炭素分の多い有機質で「土作り」をすることです。この方法で「土作り」をすると微生物の「棲みか」が増え、土の「団粒構造」を発達させます。

 作物は、団粒の中に強い力で保持されている「水」を吸おうとするために、体内に水に溶ける「糖」をたくさん作り、細胞内の浸透圧を高くしようとします。この生理現象は、細胞内にブドウ糖などの「糖類」を増やすことになるので、結果として作物の甘みが増すことが知られています。

 また、微生物の働きを土づくりに活かした「生きた土」の栄養を根から吸い上げた野菜は、葉や茎の表面が強くなり「光合成機能」もアップし、「抗酸化力」などの機能性物質を多く含んだ身体によい「健康野菜」が育つことになります。

11 「硝酸態窒素」とは?

 硝酸(NO3-)の形をした窒素を「硝酸態窒素」(硝酸性窒素)と言います。植物は、栄養としての「窒素分」を硝酸態窒素とアンモニア(NH4+)の形をしたアンモニア態窒素(アンモニア性窒素)の形で吸収します。

 危険性として硝酸態窒素を動物が多量に摂取する「メトヘモグロビン血症」の原因となることが知られています。農林水産省の「食品安全に関するリスクプロファイルシート」(化学物質)によると、1945 年に米国で硝酸態窒素を高濃度に含む飲料水(井戸水)により2人の幼児にこの病気が発症した事例が 初めて報告されました 。その後、北米とヨーロッパで約2,000の事例が報告され、そのうち7~8%が死亡に至っています。

 野菜中の硝酸態窒素に起因するとされる事例として、西ドイツで 1959 年からの7年間に、ホウレンソウ中の硝酸態窒素により 15 件のメトヘモグロビン血症が発生し、その患者のすべてが3か月齢未満の乳児であったことが報告されています。

 日本国内では、1996 年に硝酸態窒素を高濃度に含む井戸水を原因とする新生児のメトヘモグロビン血症の事例が 報告されています。

 また、国際がん研究機関 (IARC) によると、「亜硝酸態窒素」(硝酸からアンモニアに還元される過程の中間産物)は、胃の中で第二級アミン等と反応して、N-ニトロソ化合物を生成するおそれがあるとされています。N-ニトロソ化合物は動物実験」において発がん性があることが報告されています。

 なお、国では、野菜に含まれる硝酸態窒素は、「ゆでる」ことや「漬ける」ことで減少させることができるとしています。

 現在、硝酸態窒素などの危険性について、国民の関心が高まっていますので、農林水産省では、これらを派生する物質を「硝酸塩」と称して詳細を解説しています。

 

Ⅲ 店舗(食堂)

1 予約が「10日前」までの理由は?

 料理は、じっくりと手間暇をかけるほどおいしくなります。また、そこに厳選した素材が育まれた物語が加わると、食べる人の味覚を刺激する素晴らしい「エッセンス」になると考えています。

 すみれ自然農園食堂では、野菜の選定からメニューの考案、そして、料理の仕込みにたっぷりと時間をかけます。

 「農園」の中を歩きながら、「四季の」を感じながら・・・、考えて、考えて、お客様にあった野菜を選び、料理のイメージを紙に描き、それから仕込みを開始します。

 このため、どうしても準備に日数を要してしまいます。何事にも「不器用」な調菜人ですが、どうぞ、ご理解の程、よろしくお願い致します。

2 「便所開き」とは?

 人間が、山から切り出した「木」は、茶室に使われれば茶の香りを楽しめるのに対し、便所に使われれば、その至福を楽しむことはできません。「便所開き」は、昔の人達が自然を敬い、木への感謝を込めてきた儀式である言われています。

 また、新居の「便所」には、その家の住人を守るために「厠(かわや)の神様」が降臨されますので、家族の末永い安泰を祈って神様と茶を厳かに頂く風習としても伝わっています。

 なお、厠の神様は、水とお産に関係する神様であるため、その場所をいつも清浄に保てば、家族が健康で子孫繁栄につながるという「縁起」があります。

 すみれ自然農園食堂は、店舗のお披露目の際に地域とのよき「御縁」を結び、よりよき「円」(循環)が広がることを祈念して、長野県で初めてこの儀式を執り行いました。

3 「ハレ」とは?

 いつもどおりの日常的な生活を送る日を「ケ」の日と呼ぶのに対して、神社の祭礼、正月、節句、七五三などの伝統行事、冠婚祭、特別な祝い事などを行う日を「ハレ」の日と呼びます。

4 「京間」とは?

 畳割りでは、一畳が6.3尺×3.15尺の大きさとなり、この畳を使った部屋は「京間」となります。これに対して、江戸間の一畳は5.8尺×2.9尺になりますので、同じ十畳でも、広さは小さくなります。 (*一尺≒30.3cm)

5 お席料が無料となる「和装」とは?

 古くから日本で用いられてきた様式の衣服で、着物、浴衣、作務衣、袴着の「和服」を指します。

6 「仏滅」が休みの理由は?

 仏滅は、何かにつけてよくないとされている日です。科学的な根拠は何一つありませんが、すみれ自然農園食堂は、町一番の「縁起」のよい店としているため、お客様をおもてなしするのによくない日は、お休みとしています。

7 「里山の食事」とは?

 「耕す調菜人」が、飯島町の里山で、まぶしい太陽の光、澄んだ空気、アルプスから流れる清らかな水で育まれた旬菜をたっぷりと使って、食べた人が「幸せ」になるようにと願って調理する善菜(*)から甘味までの「お任せ健康メニュー」のフルコースです。

 *正式には「前菜」(ぜんさい)が正しいのですが、すみれ自然農園食堂では、身体が「喜ぶ」野菜として、「前」の代わりに「善」の字を当てています。

 

Ⅳ 伝統行事・風物などについて

● 「儀式」の意義は?

 儀式とは、一定の作法・形式のっとって行われる行事ですが、その意義を現代風に言えば、「日常とは違ったイベントを経験して、生活をリフレッシュさせること」といわれています。

1 家族編

(1)「お食い初め」とは?

 生後100日か120日目に赤ちゃんが「一人前の人間として成長し、一生涯、食べることに困らず、健やかに育つように」との願いを込めて祝う儀式です。初めて母乳以外の食べ物を箸で与えることから「箸初め(はしぞめ)」、「箸祝い(はしいわい)」とも呼ばれます。

(2)「お食い初め」の由来は?

 平安時代の宮廷貴族社会で行われた通過儀礼で、大陸由来の生後100日目の赤ちゃんに餅を食べさせる「百日(ももか)祝い」という風習がありました。また、初めて食事の真似をさせる「まなはじめ」という儀式がありました。

 「まな」とは、かわいい子を意味します。食膳に供する魚も「真魚(まな)」と呼びましたので、言葉の音のつながりで、愛おしい我が子の「初めて」を祝って、このような儀式が生まれたのでしょう。この「まなはじめ」には、「真菜始」と「真魚始・魚味始」という字を用いたとのことですので、儀式も初めての野菜と魚の場合とは、区別して使い分けていたかもしれません。

 江戸時代には、武家や商家などで生後120日経つと、飯や魚、5個の餅、吸い物、酒などの膳部(ぜんぶ:膳にのせて供する食物・料理)をそろえて幼児に食べさせる真似をした儀式をしたとのことです。

 今の「お食い初め」には、日本らしい風習として、『歯固め』を願う「かたいもの」が食膳に添えられます。氏神様の境内の小石の場合もありますが、地域・家によっては、異なる場合もあります。山の里では、胡桃や栗であったり、海の里では、干し鮑であったりします。碁盤がある家では、碁石を添えることもあるそうです。また、縁起を担いで皺(しわ)が「長寿」を連想させる梅干しや「多幸」に繋がる蛸(たこ)の場合もあるとのことです。

 この歯固め・・・、「歯」とは齢(よわい)のことで、歯が丈夫であれば年齢をのばすことができましたので、その昔、正月の三が日に長寿を祈って、神様に供えた大根、菰(まこも)、押し鮎、猪肉などのかたいものを食べた「新年の行事」を起源とするともいわれています。

 「お食い初め」は、この様な儀式や行事が少しずつ変化しながら、現代まで引き継がれ「お食事の真似をさせる「しきたり」として残り、地域によって縁起のよい習わしが取り込まれたと考えられています。

 なお、すみれ自然農園食堂では、「お食い初め」を『真菜始』の形式で御準備させて頂きます。

2 季節編

(1)「おやす」とは?

 長野県でも南信(三遠南信地方や美濃など)で作られる「しめ飾り」の一種で、神様の食べ物を入れる食器を表しています。玄関、床の間、神棚など、様々な場所に飾ります。 

(2)「どんど焼き」とは?

 正月15日に行う歳神様をお送りする火祭りの行事です。正月の松飾り、しめ縄、書初めなどを持ち寄って焼き、その火で餅を焼いて食べ、火にあたりながら健康(まめ)と幸福を祈ります。飯島町では、地区によって「ほんやり」という場合もあります。

 また、日曽利地区では「かさんぼこ」といい、唐傘(昔の傘)の骨と骨の間に竹の棒を何本もくくりつけ、傘には色とりどりの紙を貼り、高さ10mもある支えの竹のてっぺんにつけて焼きます。

 昔は、書初めで書いた紙に火がつき、燃えながら高く上がると字が上手になるといわれていたため、子供達が真剣に取り組む書道の姿は、お正月の風物でした。

(3)「繭玉飾り」とは?

 蚕(かいこ)の繭(まゆ)を模して作った色とりどりのお団子をサカキ、ヤナギ、ミズキなどの枝にさして飾ったもので、蚕の成長や農作物の豊作を祈って行われる信州の伝統的な風習の一つです。

(4)「恵方巻き」(えほうまき)とは?

 節分の夜に、恵方(その年の縁起がよいとされる方角・歳神様がおいでになる方向)を向いて、食べる「太巻きずし」のことです。切っていない太巻きずしを丸ごと1本、かぶりつく様に食べるため、「丸かぶり寿し」とも呼ばれます。食べる時には、決して笑ったり、話したりしてはいけないという「しきたり」があります。

 これを丸ごと食べると、1年間「無病息災」でいられるといわれています。この理由は、闇夜に家の中を覗く鬼が、仁王立ちで、大きな目を見開いて「金棒」の様な太巻きずしを口に頬張る姿を嫌い、去ることで、その家に災いが取り憑かないからだといわれています。

 また、太巻きずしは「」を巻き込む、包丁で切り分けないのは「」を切らないためなどの「いわれ」もあり、恵方を向いて食べるのは起が良いこととされました。元々は西日本の風習でしたが、今では信州でも広く行われるようになりました。

(5)「社日」(しゃにち)とは?

 春分(3月21日頃)と秋分(9月23日頃)に最も近い戊(つちのえ)の日を「社日」といいます。この日は「土」の神様をお祀りするので、農作業などで土をいじることを忌み嫌う(いみきらう)日とされました。春と秋のそれぞれの社日は、「種まき」の時期と「収穫」の時期にあたります。

 そのため社日は重要な節目と考えられ、春は五穀の種子を供えて豊作を祈り、秋は初穂を供えて収穫を感謝するようになりました。信州では「お社日様」といい、春は神様を迎え、秋は神送りとして餅をついて祝います。

(6)「伊那のばか風」とは?

 特に4~5月頃に低い地域から吹いてきた南風が、伊那谷の狭い谷間で押し縮められて、一気に標高の高い方にめがけて吹き上がる強い突風のことです。

(7)「お煮掛けそうめん」とは?

 冠婚葬祭の人が集まる時に頂く長野県の郷土料理です。夏は法事やお盆の時に振る舞われます。戻しシイタケ、千切りニンジン、油抜きして刻んだ油揚げなどを煮た汁をかけるところから、この名前がつきました。

(8)「えびす講」とは?

 商家、農家などが繁盛、豊作などを祈願して、福徳の神様である「恵比寿様」をお祀りする行事です。神無月(10月)は、日本中の神様が出雲大社に出向き、恵比寿様だけが留守をするとされたため、お気の毒な恵比寿様を慰めようということから始まったといわれています。

 行われる日は地方によって異なり、関東では10月20日に行う地域が多いのに対し、農村部では農閑期の12月8日に「百姓えびす」を行うところもあります。

 長野県の上伊那地方では、留守役を解かれた恵比寿様が出雲大社に出発する11月1日の朝は、お宝を沢山お持ち帰り頂けるようにと願って、「あんこ」を入れない「米粉のおやき」を作ってお供えし、お帰りになる11月20日に「えびす講」を行い、「あんこ」をいっぱい入れた「米粉のおやき」を一升桝に納めてお供えするという風習が残っています。

 なお、恵比寿様は、「エビで鯛を釣る」ことから、小さな元手で大きな利益が得られるという縁起で、漁村では豊漁の神様、商家では商売繁盛の神様、そして、農村では豊穣の神様(かまどや田の神様)として信仰されています。

(9)「宵(よい)えびす」とは?

 主に農村で行われる「えびす講」の前の晩に「肴(さかな)」を供えて、お祝いする行事です。

(10)「酉の市」(とりのいち)とは?

 11月の酉の日に開運招福、商売繁盛を家に取り込むこと願う祭りです。農具の熊手や稲穂を飾り、八人の頭(かしら)になれるようにとヤツガシラ(サトイモ)や黄金餅(粟餅)を食べる風習があります。

(11)「亥の子」とは?

 多産なイノシシにあやかって子孫繁栄を祈願し、収穫を祝って「亥の子餅」を食べる風習です。旧暦十月の亥の日、亥の刻(午後9時~11時)に行われますが、もともとは古代中国の宮廷儀式に由来します。

 亥の子餅は、餅に大豆・小豆・ササゲ・ゴマ・栗の粉と柿と砂糖を加えたもので、食べると無病息災になるといわれています。また、茶をたしなむ家では、この日に「炉開き」をし、新茶の「口切り」を行います。