8地宝の郷土資源「草」

 信州で草といえば「雑草」のこと。生やすことは歓迎されません。元気な農家さんは、せっせと草取りをします。農業法人さんは、ラジコンやスパイダーモアといった畔草刈機で法面を芝生のようにします。農作業のかなりの時間が、この草管理ではないでしょうか。農家の負担となっている大変な労力を減らし、少しでも益なものにできないでしょうか?

 当たり前のことをよく考える賢農家は、観察眼に長けています。そして、研究熱心です。また、これからの農業を心配する研究者は今、様々な技術の知見を発表しています。この「熱心」と「心配」が結びつくと素晴らしい知恵が生まれます。今、景観形成の面や種の多様性など多面的な便益を考慮しながら在来種の小型草種を存続させることは、理想的な「植生管理」といわれています。また、雑草が「許容限界量」(雑草が生えていても問題にならない量)を超えなければ、作物、草の双方の根に「共生」する微生物の働きで、作物の収穫量を増やすことが研究で明らかになりました。ヨーロッパでは、すでに草の絨毯(じゅうたん)の中で野菜が育つ光景が見られます。
 常識に縛られない、ありえないと思わないことが「持続可能な」“sustainable”農業の未来に繋がるかもしれません。

2021年09月26日