「経営の神様」から学んだ観光
こんな時・・・、
雪深い日に、一冊の書籍を静かに読みました。
その中に書かれていた言葉です。
「日本においては、観光は決して単なる見世物商売でなく、それは、持てる者が持たざる者に与えるという崇高な博愛精神にもとづくべきものだと思います。
その持てるものというのは、日本の景観の美であり、自然の美しさです。フジヤマだけが日本の景観ではありません。山、谷、川、海、これが皆、美景で、日本に来る外国人客は例外なくその美しさをたたえています。自然の美しさでは、日本の地位は世界の一、二位ではあっても、決して三位とは下るまいと思います。
こんな美しい景観の美を、日本人は今まで自国のみで独り占めしていたのです。考えてみればもったいない話で、石炭や石油ももちろん大事ですが、美しい景観もまた立派な資源だとすれば、むしろ日本の場合は、その重要さにおいていかなる埋蔵資源にも勝るとも劣らないと言えるのではないでしょうか。
そのうえ、日本は東洋のはてにあります。しかし、日本が欧米から遠いことは、決してマイナスではなく、むしろプラスです。つまり、総じて遠くに魅力を感じるのが人間の心理だからです。この点、日本はおあつらえむきです。
戦後、経済自立の道として、工業立国、農業立国あるいは貿易立国などとやかましく叫ばれて、多くの金も費やられました。しかし観光立国こそ、我が国の重要施策として最も力を入れるべきものと思います。
というのは、なんといっても観光立国によって生み出されてくる最大の利益は、日本が平和の国になるということにあるからです。ですから観光立国は何も金もうけのためだけでやるのではありません。持てるものを他に与えるという博愛の精神からも、また国土の平和のためという崇高な理念からも、堂々とこれを実行すべき唯一の立国方策なのです。」
昭和28年9月22日 松下幸之助
戦後間もない頃に、すでにこのような考えをお持ちとは・・・、
コロナ禍の中、地方に住む者として、この持てる「埋蔵資源」を有効に活用する大切さを改めて考えました。